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審査事例

事例3

請求項1

被験者から採取した血液を用いて、当該被験者が癌である可能性を示すレベルを算出する癌レベル算出装置であって、 前記被験者の血液を分析して得られるAマーカーの測定値及びBマーカーの測定値が入力されると、前記被験者が癌である可能性を示すレベルを算出する癌レベル算出部を備え、 前記癌レベル算出部は、Aマーカーの測定値とBマーカーの測定値が入力された際に、推定される癌レベルを算出するように、教師データを用いた機械学習処理が施された学習済みニューラルネットワークを有する癌レベル算出装置。

 

事例1

この請求項1に係る発明は、被験者の血液に含まれるAマーカーおよびBマーカーの測定値から、その被験者が癌である可能性を示すレベルを算出する癌レベル算出装置であります。請求項1に係る発明では、下図に示すように、機械学習された学習済ニューラルネットワークに対して、被験者の血液のAマーカーおよびBマーカーの測定値を入力することによって、被験者の癌レベルが推定されます。

 

事例1

引用発明1

審査において、以下の引用発明1(既に公開されている特許発明など)が発見されたとします。

被験者から採取した血液を用いて、医師により、当該被験者が癌である可能性を示すレベルを算出する癌レベル算出方法であって、 前記被験者の血液を分析して得られたAマーカー及びBマーカーの測定結果を用いて、前記被験者が癌である可能性を示すレベルを算出する癌レベル算出段階を備える、癌レベル算出方法。

周知技術

審査において、以下の周知技術(既に広く知られている技術)が認定されたとします。

機械学習の技術分野において、複数の者から収集した各者に関連する所定の入力データ(生体データ等)とその者が病気である可能性を示す出力データからなる教師データを用いてニューラルネットワークに機械学習処理を施し、当該学習済みニューラルネットワークを用いて、被験者に関連する所定の入力データに基づいて当該被験者が病気である可能性を示す出力データの算出処理を行うこと。

結論

請求項1に係る発明に対し、上記の引用発明が存在する場合、請求項1に係る発明は、引用発明1と上記周知技術との組み合わせから、進歩性なしと判断されます。

理由

請求項1に係る発明と引用発明1は、被験者の血液のAマーカーとBマーカーを用いて、被験者の癌のレベルを推定するという点では共通します。
引用発明1では、医師がAマーカーとBマーカーを用いて被験者の癌のレベルを推定しているのに対し、請求項1に係る発明では、教師データを用いた学習処理が施された学習済みのニューラルネットワークを用いて被験者の癌のレベルを推定している点で異なっております。
しかしながら、引用発明1と周知技術とは、ともに病気の可能性の推定を行うためのものであるから課題が共通します。そして、医療分野において医師が行っている推定方法を、コンピュータ等を用いて単にシステム化することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎません。

弊所コメント

医療分野に限らず、一般的に人が判断して行う行為を、単に機械学習を用いて行うようにしただけでは、進歩性を認めてもらうのは難しいといえます。

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