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審査事例

事例2

請求項1

回答者と質問者の会話に係る音声情報を取得する音声情報取得手段と、前記音声情報の音声分析を行って、前記質問者の発話区間と、前記回答者の発話区間とを特定する音声分析手段と、前記質問者の発話区間及び前記回答者の発話区間の音声情報を音声認識によりそれぞれテキスト化して文字列を出力する音声認識手段と、前記質問者の発話区間の音声認識結果から、質問者の質問種別を特定する質問内容特定手段と、学習済みのニューラルネットワークに対して、前記質問者の質問種別と、該質問種別に対応する前記回答者の発話区間の文字列とを関連付けて入力し、前記回答者の認知症レベルを計算する認知症レベル計算手段とを備え、前記ニューラルネットワークは、前記回答者の発話区間の文字列が対応する前記質問者の質問種別に関連付けて入力された際に、推定認知症レベルを出力するように、教師データを用いた機械学習処理が施された認知症レベル推定装置。

 

事例2の請求項1に係る発明は、下図に示すように、質問者と回答者の会話の音声情報から、質問者の質問と回答者の回答をテキスト化します。そして、質問者の質問から質問種別を特定します。
そして、ニューラルネットワークに対して、質問者の質問種別および回答者の回答と、その回答者の認知症レベルを教師データとして入力して機械学習を行い、その学習済みニューラネットワークに対して、質問者の質問種別および回答者の回答を入力することによって、その回答者の認知症レベルを推定するものであります。

 

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引用発明1

審査において、以下の引用発明1(既に公開されている特許発明など)が発見されたとします。

回答者と質問者の会話に係る音声情報を取得する音声情報取得手段と、 前記音声情報を音声認識によりテキスト化して文字列を出力する音声認識手段と、 学習済みのニューラルネットワークに対して、前記音声認識手段によりテキスト化された文字列を入力し、前記回答者の認知症レベルを計算する認知症レベル計算手段と、
を備え、 前記ニューラルネットワークは、前記文字列が入力された際に、推定認知症レベルを出力するように、教師データを用いた機械学習処理が施された認知症レベル推定装置。

 

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結論

請求項1に係る発明に対し、上述した引用発明1が存在したとしても、請求項1に係る発明は、進歩性を有すると判断されます。

理由

請求項1に係る発明は、質問者の発話区間の音声認識結果(テキスト)から、質問者の質問種別を特定し、ニューラルネットワークは、質問者の質問種別と、その質問種別に対応する回答者の発話区間の文字列とを関連付けて入力し、認知症レベルを出力するように機械学習処理が施されるのに対して、引用発明1のニューラルネットワークでは、質問者及び回答者の発話区間の区別なく、音声認識によりテキスト化された文字列をそのまま入力し、認知症レベルを出力するように機械学習処理が施される点で相違しています。

 

教師データを用いてニューラルネットワークを学習させる際に、入力となる教師データに一定の前処理を施すことで教師データの形式を変更し、ニューラルネットワークの推定精度の向上を試みることは、当業者の常套手段であります。
しかし、認知症レベルの評価手法として回答者と質問者の会話に係る音声情報のテキスト化された文字列に対して、質問者の質問種別を特定し、当該質問種別に対応する回答者の回答内容とを関連付けて評価に用いるという具体的な手法を開示する先行技術は発見されておらず、そのような評価手法は、出願時の技術常識でもありません。
したがって、引用発明1のニューラルネットワークに回答者と質問者の会話に係る音声情報を学習させるに当たり、質問者の質問種別を特定し、当該質問種別に対応する回答者の回答内容とを関連付けて教師データとして用い学習をさせることは、当業者が容易に想到し得ないことであります。また、引用発明1に識別子の推定精度を向上させるための単なる設計変更や設計的事項の採用ということもできません。
さらに、請求項1に係る発明では、質問者の質問種別を特定し、当該質問種別の質問に対応する回答者の回答(文字列)を関連付けることによって、ニューラルネットワークは、教師データから熟練した専門医の知見を効果的に学習することができるので、精度の高い認知症レベルの推定を実現することができるという、顕著な効果が得られます。
したがって、請求項1に係る発明は、進歩性を有すると判断されます。

弊所コメント

学習済みニューラルネットワークに入力される入力データに対して、所定の前処理を施して推定精度を向上させること自体は、当業者の常套手段として進歩性は認められないようですが、その前処理の方法が公知な手法ではなく、技術常識でもない場合には、進歩性が認められるといえます。

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