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審査事例

事例4

請求項1

ドライバにより自動ネジ締付作業が行われたときのネジ締付品質を評価するネジ締付品質推定装置において、前記ドライバの回転速度、角加速度、位置及び傾きから構成される状態変数セットを測定する状態測定部と、前記状態測定部により測定された前記状態変数セットと、当該状態変数セットで自動ネジ締付作業が行われたときの前記ネジの締付品質とを関連付けてニューラルネットワークを機械学習させる機械学習部と、ドライバにより自動ネジ締付作業が行われたときに測定された状態変数セットを、前記機械学習部によって学習させた前記ニューラルネットワークに入力すると、ネジ締付品質を推定するネジ締付品質推定部とを具備するネジ締付品質推定装置。

 

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右図に示すように、自動ネジ締結作業におけるドライバの回転速度、角加速度、位置及び傾きから構成される状態変数セットと、その状態変数セットで自動ネジ締付作業が行われたときのネジの締付品質とを関連付けてニューラルネットワークを機械学習させ、そのニューラルネットワークに対して、状態変数セットを入力することによってネジ締付品質を推定するものであります。

引用発明1

審査において、以下の引用発明1(既に公開されている特許発明など)が発見されたとします。

ドライバにより自動ネジ締付作業が行われたときのネジ締付品質を評価するネジ締付品質推定装置において、前記ドライバの回転速度及び角加速度から構成される状態変数セットを測定する状態測定部と、前記状態測定部により測定された前記状態変数セットと、当該状態変数セットで自動ネジ締付作業が行われたときの前記ネジの締付品質とを関連付けてニューラルネットワークを機械学習させる機械学習部と、ドライバにより自動ネジ締付作業が行われたときに測定された状態変数セットを、前記機械学習部によって学習させた前記ニューラルネットワークに入力すると、ネジ締付品質を推定するネジ締付品質推定部とを具備するネジ締付品質推定装置。

引用発明2

審査において、引用発明1に加えて、以下の引用発明2が発見されたとします。

ネジの締付品質の評価方法において、ドライバの位置及び傾きを測定し、前記測定された前記ドライバの位置及び傾きに基づき、ネジの締付品質を評価するネジの締付品質の評価方法。

周知技術

審査において、以下の周知技術(既に広く知られている技術)が認定されたとします。

機械学習装置の技術分野において、機械学習装置の出力の信頼性や精度を高めるために、出力と相関関係を有する可能性が高い各種変数を、機械学習装置の入力として採用することは技術常識である。

結論

請求項1に係る発明に対し、上述した引用発明1および引用発明2が存在する場合、請求項1に係る発明は、引用発明1および引用発明2の組み合わせ並びに技術常識から、進歩性なしと判断されます。

理由

請求項1に係る発明は、ドライバの回転速度、角加速度、位置及び傾きの、4つの状態変数から構成される状態変数セットを測定し、その4つの状態変数から構成される状態変数セットを用いて、ニューラルネットワークの機械学習とネジ締付品質の推定とを行うのに対し、引用発明1では、ドライバの回転速度及び角加速度の2つの状態変数から構成される状態変数セットを測定し、その2つの状態変数から構成される状態変数セットを用いて、ニューラルネットワークの機械学習及びネジ締付品質の推定を行う点で相違します。
しかしながら、引用発明2は、ドライバの位置及び傾きに基づき、ネジの締付品質を評価するものであるから、ドライバの位置及び傾きとネジの締付品質との間に、評価に係る相関関係があることを示しています。
そして、機械学習装置の技術分野において、機械学習装置の出力の信頼性や精度を高めるために、出力と相関関係を有する可能性が高い各種変数を、機械学習装置の入力として採用することは技術常識であります。
以上の事情に基づけば、引用発明1に、機械学習装置の出力の信頼性や精度を高めるために、ドライバの回転速度、角加速度に加えて、ネジの締付品質と相関関係を有する引用発明2のドライバの位置及び傾きについても状態変数として採用し、4つの状態変数から構成される状態変数セットを用いて、ニューラルネットワークの機械学習及びネジ締付品質の推定を行う構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであります。

弊所コメント

事例1の請求項2で説明しましたように、機械学習済みニューラルネットワークの入力データとして、新しいパラメータを加えることによって顕著な効果が得られる場合には、進歩性が認められる可能性があります。
ただし、事例4のように、そのパラメータ(ドライバの位置及び傾き)が、出力データと高い相関関係を有することが知られており、特に顕著な効果を有するものでない場合には、そのようなパラメータを加えたとしても、進歩性を認めてもらうのは難しいといえます。

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