最高裁判所第二小法廷 プラバスタチンNa事件(平成24(受)1204、平成24(受)2658)
平成27年6月5日 最高裁判所第二小法廷
プラバスタチンNa事件(平成24(受)1204、平成24(受)2658)(原審:知財高裁大合議 平成24年01月27日判決 平成22(ネ)10043号)
最高裁は、プロダクト バイ プロセス(以下、PBPという)クレーム形式で記載された特許発明(物の製造方法で特定された物の発明)の技術的範囲は、その製造方法により製造された物と構造、特性等が同一である物として確定されるものと解すると判示しました。
「願書に添付した特許請求の範囲の記載は、これに基づいて、特許発明の技術的範囲が定められ(特許法70条1項)、かつ、同法29条等所定の特許の要件について審査する前提となる特許出願に係る発明の要旨が認定される(最高裁昭和62年(行ツ)第3号平成3年3月8日第二小法廷判決・民集第45巻3号123頁参照)という役割を有しているものである。そして、特許は、物の発明、方法の発明又は物を生産する方法の発明についてされるところ、特許が物の発明についてされている場合には、その特許権の効力は、当該物と構造、特性等が同一である物であれば,その製造方法にかかわらず及ぶこととなる。
したがって、物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合であっても,その特許発明の技術的範囲は、当該製造方法により製造された物と構造、特性等が同一である物として確定されるものと解するのが相当である。」
ただし、最高裁は、「物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である。」
すなわち、PBP形式のクレームが、特許法36条6項2号を満たすには、「出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られる」と判示し、そのような事情が存在しない場合には、特許法36条6項2号違反(明確性要件違反)になるとしました。
なお、本件最高裁判決の判示内容を踏まえ、特許法36条6項2号違反(明確性要件違反)に関する当面の審査については、特許庁のHPにて公開されております。
●「プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する当面の審査・審判の取扱い等について」
https://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/product_process_C150706.htm
今後の特許出願に限らず、既に出願されたものも対象となります。同様に、今後請求される審判事件、特許異議申立事件、判定事件(以下、「審判事件等」という。)に限らず、現在係属中の審判事件等も対象となります。したがって、既に成立している特許に対する審判事件等も対象となります。